学会の概要

会長からのご挨拶

2014年10月に設立されました宇宙太陽発電学会の初代会長に就任いたしました松本紘でございます。 宇宙太陽発電システム(SSPS)は宇宙空間で超大型の太陽電池パネルを広げ、 太陽光発電によって得られる直流電力をマイクロ波に変換して送電アンテナから地上に伝送する方式の発電所です。 上空36,000kmの静止衛星軌道にあり、常に地上から見えており, 受電側ではマイクロ波をレクテナと呼ばれる整流アンテナで再び電気エネルギーに変換して利用致します。 宇宙空間に浮かぶ発電所から地上に電力を送らなければならないため、 無線による電力伝送技術が重要となっています。

1968年に米国のピーター・グレーザー博士によって提案されたSSPSは、地球上のエネルギー不足を補い、 放射性廃棄物問題を抱える原子力発電所の不足を補い、 環境破壊や地球温暖化をもたらす火力発電所に代わる大型基幹電力供給源となり得るものとして, 温暖化ガス抑制に大きく貢献する発電方式です。我が国の宇宙基本計画やエネルギー基本計画にも明記されております。

1975年から宇宙プラズマの基礎研究のために米国のNASAに留学した際に, 宇宙太陽発電所の設計と評価が行われておりました。社会に役立つ宇宙を利用する視点から, 帰国後日本でもSSPSの研究を開始しました。 宇宙プラズマとマイクロ波の非線形相互作用の理論計算と計算機シミュレーション, 世界で初めての宇宙プラズマと強いマイクロ波の非線形相互作用のロケット実験, 地上からのマイクロ波を電気に変えて動く模型飛行機を飛ばす公開実験等々,約40年に亘ります。 他にも,NASDA (JAXA) や宇宙科学研究所,多くの大学等でも,マイクロ波およびレーザー方式の送受電, 宇宙での発電,構造物,輸送,ロボット,地上インフラなどの広範な研究が行われて参りました。

SSPSの実現のためには,理工学のみならず社会科学の側面も含めた総合的な研究,取り組みが必要です。 エネルギー資源の乏しい日本は,SSPSに関する多くの技術分野で世界をリードしてきております。 この実現を加速させ,人類社会に貢献するため,「宇宙太陽発電学会」を設立致しました。 これまで,基盤要素技術やシステム化に関する研究を進めている大学,企業,研究機関などが結集し, 研究交流,情報交換などを行って参りました「太陽発電衛星研究会」を発展的に解消したものです。 本学会は,広範な人々を結集し,宇宙太陽発電システムに関する基礎的研究及びその応用技術の進歩, 実現の促進ならびに知識の普及を図り,もって学術文化の進歩普及,産業の発展及び生活の向上に寄与するとともに, 世界の恒久的な発展と平和に貢献することを目的としております。 会員の皆様とともに,SSPSの実現を一歩でも近づけることに貢献できればと考えております。

宇宙太陽発電学会初代会長 松本紘