マイクロ波を用いた小型飛行体(MAV)への無線エネルギー送電システムは、フェーズドアレーを用いた送電システム、MAVのヨー角に依存しないレクテナシステム、またソフトウェアレトロディレクティブ方式を採用した追尾システムの3つサブシステムにより構成される。追尾システムではMAVより送信されるパイロット信号を、位相比較法を用いてPC内で解析し入射角を算出、その情報をさらに送電システムに送信する。本発表では模擬パイロット信号によるMAV位置検知の結果、及び2次元化、小型化、効率化を図るため高周波用小型集積回路を利用した新追尾システムの検討結果について発表を行う。
飛行船から地上に向けて、電力および情報の同時マイクロ波無線伝送実験を行ない、電力・情報同時伝送技術、および飛行船搭載の機器小型化技術に関する技術検証を行なう予定である。将来は、災害時を想定した飛行船等の移動体に無線送電機能を付加したアドホックな携帯電話基地局システムを想定しており,また、宇宙太陽発電衛星の実現に向けた一歩としても位置づけている。本発表では、試験の概要、準備状況、可能ならば試験結果について述べる予定である。
SPS異常事態であっても大元の直流電源をすぐ切れない場合、発生したマイクロ波を宇宙空間に散逸させる必要がある。従来は位相配列アンテナの位相を、ランダムにすることが検討されていた。しかし、これでは確率的に、高い放射がある地域に発生する可能性を意味する。我々は位相配列アンテナの位相分布を、一様分布から球面状分布に切り替えて、地上への放射レベルを極端に下げる方法を提案する。シミュレーションで妥当性を実証する。
本研究室ではマイクロ波送電に関する研究及び実験を電波暗室を中心とした屋内で行ってきた。しかしながら、実際にマイクロ波送電の応用が考えられる屋外での環境下では、屋内と異なり雑音や干渉波等の影響が考えられる。そこで本研究では屋外でマイクロ波送電の研究を行うための実験系を開発し,実験試験局の免許を取得した。今後は開発した実験系を用いて実際に屋外送電実験を行うことで、雑音や干渉波による影響を調べる予定である。また正確にビーム制御を行うためのソフトウェアレトロディレクティブシステムにおいて、屋外のように雑音が強い場合には正しく到来方向を推定できないので、雑音に強い到来方向の推定法の研究が必要となる。
宇宙太陽光発電システムでは受電部からのパイロット信号で送電ビームの制御を行う方式が多い.しかし、複数の発電衛星を用いる時には,送電ビームの位相が揃わず,合成電力が低下するという問題があった.この解決には,衛星側で基準源を統一する手法と、パイロット信号により各衛星の送信波位相を制御する手法が考えられる. 本報告では,まず,衛星側で基準源を統一する手法として,衛星群の一つをマスター機とし,その共通基準信号源をスレーブ機に同期させるため方法を紹介し,有線試験でコンセプトを確認した結果を述べる.ついで,パイロット信号により各衛星の送信波位相を統一する方法として,受電部から各衛星単位で設けた移相器に対して位相量を設定することでダイナミックに衛星からの送信電力の位相を補正する方式についてコンセプトを紹介する.
本研究では、宇宙太陽発電システム(SSPS:Space Solar Power System)のマイクロ波ビーム制御システムの高精度化を目指し、”レトロディレクティブ方式とクローズドループ方式の併用方式“を提案するとともに、要素試験を行いその有効性を確認した。本稿では、要素試験の仕様と試験結果の概要を報告する。
我々の研究グループでは、小型飛行機を追尾しながらマイクロ波を送り、その電力で飛行機のモーターを駆動させるシステムを研究開発してる。小型飛行機に搭載するレクテナは、翼の形状に干渉しないようにするために、薄くフレキシブルであることが望まれる。また、飛翔体の位置による偏波依存性をできるだけ抑える必要がある。本公演では、フレキシブルアンテナの構想、および飛翔体へのエネルギー伝送の模擬実験の結果を報告する。
宇宙太陽光発電システム(SPS)の実現に際し、克服すべき重要な技術課題の1つとして電力伝達能力の高効率化がある。NASAのSPS Reference Systemでは、受電システムに89%の変換効率を用いてシステムのフィージビリティスタディが行われているが、この値が将来の受電システムの1つの目標となる。現在、開発されているレクテナのレクテナ素子レベルの変換効率は、概ね全てが70%程度止まりであるが、この変換効率の支配的要因は、整流回路に使用されている整流ダイオードであると看做されている。本稿では現状のレクテナの変換効率を改善することを目的として、整流ダイオードのあるべき特性について検討を行った。
宇宙発電衛星から伝送されるマイクロ波について生態系への影響は十分調査されていない。植物に関して、屋外と屋内で2.45GHzと5.8GHzのマイクロ波を植物に照射するとNASAのリファレンス中心部のレベル程度の電力密度で環境にもよるが成長促進が明確に観察されている。この成長促進のメカニズムを調べるため5.8GHzのマイクロ波電力密度をパラメーターにして生育環境を制御した屋内施設で照射実験を実施した。また土壌温度の影響を調べるためこの温度をパラメーターとした非照射状態での生育の観察を行ったので、これらの結果について報告する。
現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が研究を進めている宇宙エネルギー利用システム(SSPS)において、これを実現するためには、幾つかの技術的課題が存在する。その中でも大型構造物を組み立てる技術は、クリティカルな技術の一つである。JAXAが検討を進めているSSPSは、小さくても100mスケール、大きいものは3km以上のスケールの大型構造物を無人で組み立てて軌道上に設置することを想定している。各構造物の要求条件に対して構造様式の選定、組立方法、修理方法等、システムから要素まで各レベルでどの方式を選ぶか検討すべき項目は多数あり、これらの項目をどのように検討するかも大きな課題である。本講演は現在の検討状況、および検討上の課題について説明する
SSPSは大型構造物であり、発送電パネルは柔軟であるので、振動が発生する可能性がある一方で、地球局のレクテナに正確に送電するためには発送電パネルの振動を抑えなければならない。これまでにSSPSの振動制御に関する研究として、モード解析や偏微分方程式による記述などで数値的な解析はされているが、実験的にその挙動確認される例はこれまで少ない。そのため、本研究ではSSPSの地上実験2次元モデルに対して、テザーを用いた振動制御実験を行い、テザーによる振動制御の有効性を示すことを目的とした。なお、振動制御の際に必要な力は微小であるため、本研究では柔軟なレバレッジとリニアモータアクチュエータを組み合わせることで任意の微小張力を発生させるアクチュエータを製作し、これを用いて実験を行った。
テザー型SSPSようにテザーの張力を構造物の制御に用いるシステムにおいて,テザーの状態を把握するためにテザーの張力・伸展速度の計測が必要となる.特に、低張力状態で走行するテザーの動的挙動の計測・観測技術が必要となる.機械式・接触式の張力・速度計測は,走行経路の複雑化,テザー/線材への接触影響や予期せぬ大張力による計測装置へのダメージなどの懸念がある.本研究では,展開時・回収時・制御時などでのテザー挙動の監視,長期間使用するテザーを含む大型宇宙構造物の保守・点検を考慮して,テザーに接することない非接触な方法でテザーの運動への干渉を小さくし,走行速度及び走行時張力を測定することを目的とした.
USEF/ISASで検討が進んでいるマルチバステザー型SSPSについて,その軌道上での形状の安定性の評価を行った.本システムは,重力傾斜力をその構造形状の維持に用いている点に特徴がある.重力・遠心力のポテンシャルエネルギー及び構造のひずみエネルギーを用いて,平衡点を導出し,その平衡点回りの安定性を評価する.さらに,平衡点近傍での質量行列及び剛性行列を導出し,固有振動数とモード形状を導出した.解析結果より,安定な平衡点の存在が確かめられたが,パネルの固有振動数が低いため,軌道運動や姿勢運動との連成が懸念されることが判明した.
発電変電送電一体型パネルを軌道上で展開することにより100m×95mの太陽発電モジュールを構築し、さらにこのモジュールを多数連結することにより大型宇宙太陽発電システムを建造する考え方がある。100m×95mの太陽発電モジュールを1回で打ち上げるためには、ペイロード容積の観点から、発電変電送電一体型パネルのソリッドなパネル厚さは2cm程度とせざるを得ないが、全ての電子機器をこの厚さに収納し且つパネルとしての構造特性を維持することは難しい。そこで、厚さの制約を緩めながらも全容積を1回の打ち上げペイロード容積に収める方法として、インフレータブル伸展ブームを併用した展開型パネルの要素試験を行い、インフレータブル伸展方式の実現可能性を示した。
マイクロ波がSSPSの太陽電池に漏洩、回折し、放電を引き起こす可能性がある。放電の可能性について検証するために真空チャンバー内に太陽電池を配置し、5.8GHzの高強度マイクロ波を照射する実験を行い、実際に放電が発生することがわかっている。今回はマイクロ波の反射が少なくなるように真空チャンバーを改良し、実際の環境により近い進行波環境下で太陽電池へマイクロ波照射を行った。この実験で太陽電池上での放電を確認した。このことから放電は今までの実験環境特有のものではなく、定在波、進行波環境のどちらでも放電が発生することがわかった。
M-SSPSで高電圧での発送電を行うにあたり、電力ケーブルには宇宙環境に耐えられる絶縁性能が必要となる。基礎研究として真空環境でケーブルに高電圧を印加するとどうなるかを試験した。今回、真空チャンバー内でケーブルに高電圧(10~15kV)を印加した。試験の結果、ケーブル上で放電が発生した。表面電位測定計を用いてケーブル表面の電位を測定した結果、ケーブル上で発生する放電及びケーブルに印加された高電圧により、ケーブルが帯電することが分かった。また高電圧を印加したケーブルに電子ビームを照射し試験を行ったのでその報告を行う。
通常のモルニア軌道は周期12時間であるが遠地点4万kmと高高度なので,SPSデモンストレータとしての魅力はない。しかし,JAXAの試算では,周期を8や6時間とすると,東京でも仰角が50度以上もあり,距離も12,000から2万kmと近くなる。また低 軌道で赤道域に送るデモンストレータも提案されている。これらについて,松岡代表幹事の要請により検討したので,報告する。
財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構では経済産業省からの委託を受けて宇宙太陽発電システムに関連する調査研究を行ってきた。その中から最近の活動の状況について、主として安全・環境面、経済面の検討について紹介する。
現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が研究を進めている宇宙エネルギー利用システム(SSPS)では、2004年と2006年に一般成人を対象として、SSPSに対する意識調査(アンケート調査)をインターネットを利用して実施し、本SPSシンポジウムにおいて報告している。このなかで過去2回のアンケートの結果から、一般成人のSSPS開発費の負担についての意識について、再度整理を行い、発表を行うものである。過去のアンケート調査では、税金のような形での支出と電気代の値上げとしての支出についての設問を実施しており、この2つの方式を比較する中で、一般成人のSSPS開発費の負担に対する意識を報告する。