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2003年NASAのNIAC(NASA Institute of Advanced Concept)プログラムとしてBradley Edwards博士がまとめた「宇宙エレベーター」構想発表を皮切りに、日欧米の科学者を中心に宇宙エレベーターに関する研究が進められている。講演では、日本、米国や欧州での研究活動を紹介しながら、国際宇宙航行アカデミー(IAA)が2010年から実施している『宇宙エレベーター実現に向けた実現性評価活動』や『日本版宇宙列車構想』をサマライズし、その中で行われた『宇宙太陽光発電システム』に関する議論を紹介する。
人類や物資を低コストで宇宙に輸送できる未来の新しい宇宙交通システムとして、「宇宙エレベーター」の建設を構想した。宇宙エレベーターは、宇宙太陽光発電システムと一体になって開発・実現されるべきものである。講演では、宇宙エレベーターの意義と革新性を再確認しつつ、現在の科学技術の延長線上で2050年に建設が可能と考えられる宇宙エレベーターの姿を紹介し、その施工過程、構造安定性、工程、コストを述べる。完成したあかつきには一般の方々も比較的容易に宇宙旅行が楽しめる可能性がある。また、月や火星にも探査機や有人宇宙船を送ることができる。この夢の計画を実現するために必要な技術開発、安全性確保の重要性についても触れる。
昨年のシンポジウムで,無線電力伝送WPTに関する研究課題に対して中国から寄与があったことを報告した。この中国の寄与を受けて,地上での無線電力伝送,特に無接触充電を始めとする誘導や共鳴方式を中心とした動きがあった。これら一連の動きは2009年に我々がJAXAとして貢献した際に,地上におけるWPTに関する記述を充実したことによる。今年6月の会合に地上のWPTとSPSに分けて「日本」として寄与文書を提案することになった。前者は誘導や共鳴方式に関して,二年くらいを目途に勧告あるいは報告にまとめる。韓国や米国などからの提案もあり,国際化も進んでおり,まとめる方向で進展するものと思われる。地上でのマイクロ波電力伝送はその次に予定されている。一方SPS関連はもっと長期の課題として別に扱われるが,報告としてまとめる道も探る。なお,来年6月の会合に向け,電子メールによる議論が継続される。
我々はSPSの実用的システムの完成と運用を最終目標にし、SPSの要素技術開発として、小型衛星を用いた宇宙-地上間マイクロ波送電ビーム制御、プラズマと大電力相互作用の検証実験を検討している。現在、その準備段階として小型衛星に搭載する送電システムに関するブレッドボードモデルを開発しており、これを利用した地上/低高度における基礎実験、また衛星搭載用の熱構造評価を行う。小型衛星の実験による送電マイクロ波の損失評価のための基礎実験を中心に報告する。
レーザー宇宙太陽光発電システムの研究において,地上設備に利用するレーザー 光を電気に変換する研究を行っている。YAGレーザーやファイバーレーザーな ど,高出力レーザーの波長帯が大気伝送にも有利な近赤外線領域であることか ら1ミクロン帯にフォーカスしている.この波長帯にマッチする光電変換材料 について,実績のある半導体材料から対象としている光の光氏エネルギーと材 料のエネルギーバンドギャップの整合性を検討し,InGaAsやCIGSなどを候補と している.発表では比較として集光型のSi太陽電池やのバンドギャップを変化 させた非集光型III-V族セルに対するI-V特性を評価し、その依存性について報 告する。
地上への電力伝送時に近赤外レーザを用いるLSSPS (Laser-type Space Solar Power Systems) では,地球大気によって減衰されるレーザの大気透過率がシステムの稼働率を左右する.著者らは,数値気象モデルによるシミュレーション結果およびMODISによるエアロゾル衛星観測値を利用したLSSPSレーザ大気透過率の推定手法を開発した.本稿では,日本周辺における大気透過率分布を示すと共に,その推定精度について紹介する.
SPSにおいて、フェーズドアレーの高精度なビーム方向を制御するためには、各アンテナ素子の初期位相較正を行うことが重要となる。今回の発表では、導波管を用いることで各アンテナ素子の初期位相較正を個別に行う手法について提案を行う。提案手法は、SPSの各アンテナ素子にそれぞれ、測定用の導波管をかぶせるように設置をすることで、アンテナからの出力位相を測定するという手法である。この手法に関して、電磁界シミュレーターを用いて、測定用の導波管の設計を行った。また設計した導波管を用いてシミュレーションを行ったところ、複数のアンテナ素子の出力位相を個別に測定することが確認できた。
宇宙太陽発電などの宇宙開発事業には、大量の資材を地球低軌道から高軌道にまで運ぶための宇宙滞在型輸送機が必要である。宇宙太陽エネルギーを用いた輸送機を低コストで運用するためには、安価な推進剤と容易な補給が求められる。我々は、安価かつ扱いの容易な固体推進剤を使用する推進器の開発を行っている。今回、固体推進剤を用いたJ×Bアークジェット用実験装置を開発した。炭素、鉄、アルミを推進剤として使用した。印加磁場約 7 - 17 mT、放電電流約 500 Aのパルス変調放電において、安定したプラズマジェットの噴出に成功した。いずれの推進剤も、蒸発、噴出の様子が確認された。デシタル推力測定器を用いて、200 mN以上の推力を得ている。
宇宙太陽光発電システム(SSPS)の構想では、100万kWの電力を地上に送電 することを想定しており、このシステムを実現するためには、軌道上において kmサイズの大型構造物を構築する必要がある。JAXAでは、100万KWの SSPSを目指す上での中間目標として、100mサイズの構造物を軌道上で組 み立てることを目指して、検討を進めている。2012年度は、発送電パネル等 の厚みのある構造物の構造様式候補である展開トラス構造物の地上実証実験、 発送電パネルだけでなく、反射鏡等の膜状の構造物の適用可能性のあるSTEM 構造の試作試験を実施した。本紙では、この結果概要を示す。
宇宙太陽光発電システムに用いられる反射鏡は非常に大型であり、さらに高剛性と軽量化が求められている。そこで、本研究では反射鏡構造モデルを提案し、構造解析や光学解析、熱解析を実施することで大型反射鏡の実現性について検討を行い、課題を明確化した。 構造解析では提案した正六角形反射鏡構造モデルについて、結合機構の質量を考慮した場合の構造モデルの剛性への影響を明らかにした。光学解析では、鏡の取り付け精度について検討を行った。熱解析では構造モデルを構成する円筒部材について、温度分布、熱応力、熱ひずみの影響を検討した。
マイクロ波による植物への影響について次世代への影響調査と成長促進のメカニズムの解明を進めている。次世代への影響については屋外で5.8GHzによる連続照射(電力密度は数10mW/cm2)で2種類の植物の播種と種の採取を繰り返して照射実験を行っている。時期は秋から初夏にかけての6ヶ月以上の自然環境下である。現在3世代目を実施中である。成長促進のメカニズムについては恒温槽による育成実験を行っている。双子葉のカイワレ大根では水温を一定に保った条件で雰囲気温度を20℃から40℃まで行ったところ温度に比例した成長が見られている。屋内によるマイクロ波照射実験は育成容器の上部から照射していたが電力密度の違いがあるため育成容器の横方向から照射する準備を始めた。
電波防護指針では,体内に金属を埋め込んだ場合に関して,具体的かつ定量的な指針は示されていない.植込み型心臓ペースメーカや医療用プレートなどの金属材料を用いた植込み型医療機器の装着者が該当し,指針適用性の検討が重要となっている.本報告では,無線電力伝送周波数帯において金属を埋め込んだ人体のSAR(Specific Absorption Rate)推定を行う.
JAXAにおいては、これまで2003年度から継続的に成人のSSPSの社会的受容性 についてアンケート調査を実施してきている。今回の調査は東日本大震災、福島の 原発事故後、はじめて行うアンケートであり、成人の震災等による意識の変化に 絞って報告を行うものである。 これまで、大震災前の成人のエネルギーに対する意識は、環境重視の意見が多く、 太陽光発電に対する期待は大きいものがあり、特に年齢の高い層、女性層に その傾向は顕著であった。SSPSに対する意識では、SSPSに対する認知率は低いが、 その開発の必要性については支持される状況が続いてきた。 この傾向について、大震災、福島原発事故後、成人の意識に変化について、 アンケート結果から報告を行う。
1970年代後半のSPSの研究によると、大規模の電源になれば、軌道上に使われる材料は数百万トンになるので、地球外資源の利用は地球資源より安くなるだろう。近年、日本製「ハヤブサ」のお陰で、地球外資源の利用はサイエンス・フィクションではなくなった。又、米ベンチャー企業のPlanetary Resources社とDeep Space Industries社は小惑星の資源を使おうとしている。ただし、このプロジェクトが利潤を得るために、軌道で大規模の市場の実現は必要条件である。候補者として、大規模の宇宙太陽発電システム及び宇宙ホテルしか提案されていない。その上、大規模の軌道上太陽発電システムには、地上の電源だけではなく、様々の違う利用がある。従って、SPS用技術は経済成長にできるだけ貢献する宇宙政策及び国家戦略に重要な役割をする。